安住の地
自分にとっての安住の地とは。
仕事の帰り、タクシーに乗った。
タクシーの運転手は女性の方だった。
運転手の仕事はそんなに長くないかもな、と勝手に想像しながら「この仕事は長いんですか?」と話かけた。
「25年やってます」
予想を越える長さに驚きながらも、タクシーの運転手という仕事の話、仕事のやりがいの話、娘さんたちの話、住んでいる静岡の話をした。
30代の上の娘さんは、高校のときに2年アメリカに留学し、日本に戻ってきてからK大学英文科を卒業し、外資系の航空会社で秘書をしていたらしい。その後、医療福祉に興味があり、W大学に入りなおし、今は静岡で福祉関係の学校の先生をしながら全国を忙しく飛び回っているらしい。
自慢の娘さんなんだろう、たのしそうに娘さんのことを話しておられた。
娘さんは、大学で東京にでていくときも「いずれは静岡に帰ってきたい」と言っていたらしい。実際そうなった。
「静岡は住みやすいですよ、気候もいいし。みんなのんびりしてるし」
その娘さんは医療福祉という自分の本当にやりたいことを見つけたこともさることながら、静岡を住む場所として選んだ。東京や海外ではなく。
もちろん家族がいるからかもしれない。が、外を見たからこそわかる静岡の魅力が本人にとってはあるのかもしれない。
自分はどうか。
東京という街は個人的には楽しいので好きだが、すこし住みにくい。自分にとっての安住の地とまではまだ思えない。
自分にとっての安住の地とはどこか。
まあ、そんなの今から決めなくたっていいかも。
人生とは自分探しの旅だ、なんて誰かがいってたっけな。