お客の顔の見える仕事

U-jin2009-03-17



先日、Boston近郊で美味いと評判のTorayaという
日本料理屋を訪れた。


その日、店に着いたのは夕方6時頃だったにもかかわらず、
小さい店ではあったが、ほぼ満席。
席でアメリカ人が箸を使いこなし、おいしそうに日本の寿司を
食べている姿や、アメリカ人の客が訪れるたびに列を成し、
にこやかに笑みをうかべながら、寿司が食べられるのを楽しみに
待っている姿を見ていると、なにか異次元につれてこられたような
不思議な感覚に襲われた。あの感覚はなんだったのか。


店に来る前から決めていたちらし寿司とてんぷらを注文し、
今日のおすすめ、で目についた茶碗蒸しも注文。
茶碗蒸しは薄味で、非常に日本的な味付けだった。
この味でアメリカ人は満足するのかな、なんてふと思ったが
自分としては非常に好みの味だった。
ちらし寿司もいろんなネタが非常に丁寧に仕込みがされている
のが伝わってきた。また食べたい、そう思わせる味だった。


ちょうど、カウンターが見える席に座り、カウンターで
物静かな大将が黙々と寿司をにぎっているのを眺めながら
大将は、なぜこの地で日本料理屋を開こうと思ったのか、
寿司ネタはどこで仕入れているのか、
もしアメリカに住み付きこの大将の下で修行したらどうなるだろうか、
自分がにぎった寿司を、アメリカ人がこんなにおいしそうに食べて
くれるのを見ながら仕事するというのはどんな感覚だろう、
などといろんな考えが頭をよぎった。
お客の顔の見える仕事。
大事なフレーズのような気がしてならなかった。


店に着いたころはまだ明るかったが、店を出る頃には外はもうすでに
暗くなっており、店の中の明かりがきれいにほんのりと浮かび上がっていた。
また来たいな、と旨いものを食した幸福感を噛みしめながら帰路についた。