仕事を『楽しむ』

U-jin2005-11-24



もらったものの家の本&雑誌の山の中に埋もれたままになっていたR25[No.68]をなにげなく読んでいると、巻末で石田衣良が隔週連載中の「空は、今日も、青いか?」のサブタイトルに目に留まった。

  • 第十九回 ジャズタクシーの演出法

なに?ジャズタクシー?聞いたことがない。ジャズタクシーとは

真空管アンプとジャズの名盤を積んで、都内を走りまわっている名物個人タクシーだ。

とのことで読み進めると定年退職する会社員のために上司のジャズ好きを知っている部下が自宅まで送るために頼んだりするそうだ。

「後輩の皆さんがお金をだしあって、このタクシーをチャーターしたんです。ご自宅までいい音楽でお送りします。お疲れさまでした。」

とタクシーの中で声を掛けられ、六十歳のいい大人がぼろぼろと涙を流し、男泣きする。泣ける話である。またカップルに仕事を頼まれた際は、マリリン・モンローの『ハッピーバースデイ』をかけて彼女の誕生日を演出すると、こちらも感極まった女性は泣いてしまうことが多いとのこと。これらを引き合いに出し、石田氏は

この演出法が、ぼくは大切だと思う。ロマンチックだからいいのではない。自分の仕事を、自分なりにたのしみながらやるという、自己演出が素晴らしいのだ。

と。さらに

誰の仕事でも、個人にまかされている部分が予想以上に多くあるものだ。その自由な部分に自分なりのやりかたで演出を加え、仕事をたのしくする。
それは仕事をする人すべてに等しく与えられた権利なのではないだろうか。・・・(中略)・・・あなたもジャズタクシーのドライバーのようにいっしょに仕事をする同僚やお客をたのしませてあげてほしい。そうして自分自身もたのしむのだ。・・・(中略)・・・笑顔には笑顔が返ってくるものである。

上司からふられたミッションに対しては、それに見合った成果を出さなければいけない。しかしその成果を出しさえすれば、それに至るプロセスの如何を問われることはまずない(犯罪・恐喝・裏切りなどは論外)。そのプロセスは十人十色、そこが地力の見せ所でもある。そのプロセスをいかに『クリエイト』できるかに仕事を楽しめるコツがあると僕は思っている。今話題の三木谷氏も興銀入行当時は、花形ではない部門に配属されたのにもかかわらず莫大な書類のファイリングの効率がいいようにと右閉じから左閉じに変更したり、捺印の位置を効率の良い場所に変えたりと、徹底的に業務オペレーションの改善に取り組んだそうだ。またローソン(株)社長の新浪氏も三菱商事入社当時は、こちらも花形ではない砂糖事業部に配属され「期待されていないんだ」と落ち込んだそうだが、腐らずスキルアップにつとめ砂糖というシンプルな商材だったことを生かしてどうやって戦うかといった戦略的思考をみっちりと身に着けたという。それなりの地位にいる人たちは、いかにつまらない仕事でもそのプロセスを「クリエイト」し「楽しむ」術を身に着けているのだ。

目の前にある仕事に対して「つまらない」と腐る前に、先輩方を見習って自分なりの創意工夫を加えて、ありきたりなつまらない仕事を楽しんで取り組める仕事に変身させることのできる名演出家を目指したい。薄気味悪がられない程度の笑顔をふりまきつつ。


ある人に「杉村太蔵に目元が似てるね」と言われた。よろこんでいいのかどうか微妙である。太蔵クン、公設第一秘書募集中だそうだ。応募が殺到しているとのこと。応募してみようかな、なんて。