沈まぬ太陽 山崎豊子


今、テレビでドラマ化されている「華麗なる一族」の作者 山崎豊子がN航空機墜落の前後を主人公 恩地元を中心に史実に基づいて描いた大作である。

後輩君から是非読むようにと、強く薦められ正月を挟んで読了した。

読みながらN航機墜落のニュースを小さいながらもニュースステーションで見ていた映像が頭に浮かんできた。


読む人によって主人公 恩地元についてのとらえ方はそれぞれ異なるだろうが、恩地元という人間は、利発的であり、正義感が強く、思いやりがあり、頼りがいのある愛される存在ではあるが、その分妬まれてしまう、不器用で、世渡り下手な人だなと。

「U-jinさんと恩地元とは共通点があるので、それがなにか意識しながら読んでください。」と言われたから主人公 恩地の特徴をそのようにとらえながら読んだのだが、恩地元のように自分の信念を貫くため、仲間たちの期待を裏切らないために長年海外の僻地をたらい回しにされる生活に耐えられるほどの精神力はない。僕ならわびを入れて、筋を通して会社を辞める!なんて思ったが・・・ううん

そんなことより、この本を読んで少し価値観が変わった。

キャリアだ、地位だ、名誉だ、金だ、といっても一番大事なのは家族、家庭なんだということ。恩地元、行天四郎という対照的な登場人物のどちらの家庭を見たとしても、そう思える。まだ所帯を持っていない自分としては、実感に乏しい面はあるが家庭を犠牲にしてまでつかんだキャリアや、地位や、金など意味がない。人間にとっての幸せの原点は家庭なんだということ。御巣鷹山での墜落の話でもやはり家庭の大切さ、家族への愛がひしひしと感じられた。

それと、海外駐在に対して異文化に触れられ、異なる環境に身を置くことで刺激があり楽しそう、なんて子供じみた勝手な憧れがあったが、そんな明な部分だけではなく、暗の部分のあることに当然ながら気づかされた。(一生独身の風来坊なら問題ないのかもしれないが。。。)

自分にとって幸せとはなんぞや、ということを真剣に考えさせられた。

語りだせば他にもいろいろ出てきそうだが、それはまた酒の席でということで。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇 (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈4〉会長室篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)